佐紀の意識に、ドアを叩く音が、入って来た
「サキちゃん、いるんでしょ?
晩御飯、出来てるわよ。
早く、いらっしゃい」
もう、夜になっていた。
中から、返事はない。
怪訝に思い、伯母さんが、
「サキちゃん、入るわよ」
そう言って、ドアを開けようとすると、
中から、うつむいた佐紀が、出てきた。
その後ろに見える部屋の中は、真っ暗だった
「まあ、サキちゃん、
電気も点けないで、
どうしたの?」
しかし、それには答えず佐紀は、
幽霊のように、歩いて行った。
その、ただならぬ雰囲気に、伯母さんは、
佐紀の前に回り、肩を掴み、揺すった。
「サキちゃん、サキちゃん、
どうしたの?
何があったの?」
顔を上げた佐紀の頬を、涙が流れた。
佐紀が、か細い声で、
「どうしたんだろう、
涙が止まらない」
伯母さんは、佐紀の肩を優しく抱いて、
「とにかくダイニングへ行きましょう」
そう言って、佐紀を、
ダイニングへ連れて行った。

