佐紀は、下宿に帰って来た。


  “はあ~、今日はまずまず、
   楽しかったな”

と、今日の余韻に浸りながら、
寝る支度を整え、ベッドに横になった。

しかし、一人になると、
やはり、祐太のことが、思い出される。

そして、思い出すたび、
後悔の念に、苛まれた。

なぜあの時、何も言わなかったんだろう。

なぜあの時、強く出られなかったんだろう

すねて見せれば、よかったのかな。

そんな事ばかり、浮かんでくる。

でも、祐太の意志も、尊重したかったし。

それに、“あまりしつこいと、
嫌われてしまうかも”ともいう気持ちも
あった。


  “大丈夫だ。
   時間は、十分にある”


そう何度も、自分に言い聞かせていた。


  “時間は、十分にある”

そう思いながら、眠りについた。


そしてまた、日常が、始まった。