化粧室に入ると、中では、
アイリが、化粧を直していた。
佐紀は、軽く会釈をすると、
「アイリさん、大人気ですね」
「“アイリ”で、いいわよ。
タメなんだから。
あなた、バスケット、
してるそうね」
「ええ」
「私、スポーツしてる人、尊敬するわ
私には、出来ないから。
練習、大変なんでしょ?」
「ええ、まあ。
でも、一緒だよ」
佐紀は“尊敬”と言われたことに、
気をよくしたのか、
自然と、タメ口になっていた。
「一緒って?」
「ナッキーが、言ってたけど、
一生懸命練習するのは、試合で、
最高のパフォーマンスをするため
ボイトレやレッスンを受けるのも
舞台で、
最高のパフォーマンスをするため
目指すものは、一緒なんじゃない
ねっ」
「そう言われりゃ、そうね。
じゃあお互い、頑張りましょう」
「ええ」
「じゃ、お先に」
そう言ってアイリは、
化粧室を出て行った。

