以前佐紀は、同じような理由で、
交際を中断した事があったので、
祐太に、強く言う事が出来なかった。
佐紀の場合は中断であって、
やめた訳ではないのだけれど、
それでも佐紀は、
負い目を感じていたのだった。
「お前、インターハイへ行っただろっ。
俺は、行けなかった。
今、1部に上がれば、
インカレに行けるチャンスが
出来るんだ。
バスケやってたら、
一度は、晴れの舞台に
立ってみたいじゃないか。
来年が無理なら、再来年。
とにかく、これに賭けたいんだ。
だから、それ以外の事に、
かまっている暇はないんだよ」
「じやあ、それまで、待つよ」
「そんなの、やめてくれよ。
そんな事されたら、
負担になるじゃないか。
今は、バスケ以外の事は、
削ぎ落としたいんだ」
「でもぉ~………」
佐紀は今日、
“遅くなってもかまわない”と
覚悟を決めていた。
その覚悟が、祐太の言葉で打ち砕かれ、
空回りをしていた。
祐太の決意は、固かった。
佐紀は、納得できないまま、
受け入れざるを得なかった。
それからは、二人は肩を並べて、
黙ったまま歩いた。
駅で、別れ際に、
「試合、頑張ってね」
「ああ」
それが、最後の会話だった。

