佐紀は小さく、首を横に振った。
ナッキーの声が、1オクターブ上がった。
「えっ、じゃあ、何してたの」
「何って。いろいろ、話ししたり」
「付き合ってるんだったら、
腕くらい、組みなさいよ。
こうやって…」
そう言うとナツキーは、佐紀の腕に、
スッと手を回した。
「ねっ、簡単でしょ。
これは、サキの方から行かなくちゃ」
「だってぇ」
「だって、だってって、
お前は“だって教”の信者かっ。
今は男がだらしないから、
女の方から積極的に行くんだよっ」
「じゃあナッキーは、
手、つないだこと、あるの?」
「あるよ」
「じゃあ、キスは?」
「あるよ」
ナッキーは、上から口調になり、
ちょっと胸を張って、答えた。
「でねっ、ホントに付き合っていたら
手は、こうやって組むんだよ」
そう言ってナッキーは、佐紀の手を取り、
5本の指を絡ませて、握った。
「これが、“恋人つなぎ”ってヤツ」
ナッキーは、
明らかに上から目線になって、
佐紀に微笑みかけた。
そして、トドメの一言。
「ホント、佐紀って奥手なんだから」
佐紀は、何も言い返すことが出来なかった

