大学に入って、最初の授業は、
大教室だった。

よくドラマでなんか見る、
階段状に机が並んだ教室である。

教室に入ってそれを見た時、
佐紀は感激した。


  “うわぁ~、やっぱ大学は、
   高校とは違うなぁ”


その教室を、
200人近い学生が埋め尽くし、
教授が、マイクで講義をする。

テレビでは見た事があったが、
佐紀は、見るもの全てが、新鮮だった。

後でわかったことだが、
埋め尽くすのは最初の頃だけで、
学期も終わりになると、
パラパラとしか人がいなくて、
マイクの音が、
こだまするようになっていた。

佐紀は、これもある意味、
感動だなと思った。


その時、横に座ったのがナッキーだった。


  「おはよう、ここ、いい?」


  「あっ、どうぞ」


佐紀は、奥に詰めて、
ナッキーの座る場所を空けた。


  「ありがとう。
   私、教育2組の、中島早紀、
   ヨロシク」


  「あっ、私も、2組だよ」


  「そうなの?
   じゃあ、これからもヨロシクね」


どうやら、同じクラスらしかったが、
まだ入学して間が無かったので、
自分のクラスの人間も、
ほとんど知らなかった。

いや、それより、かなり人見知りの佐紀は、
人の顔をジロジロ見ることが出来なくて、
全く、誰も知らないくらいだった。