「ただいまぁ」


玄関を入り、佐紀がそう言うと、
奥から声がした。


  「お帰りぃ、食事、出来てるわよ」


友だちの話などを聞くと、
誰もいない部屋に帰るのは、
味気ないと、よく言っている。

その点“ただいま”と言って返事があるのは
嬉しい事だなと、佐紀は思った。


伯母さんは、話し好きだった。

ひどく疲れた時には、
うっとうしく思う時もあったが、
血筋なのか、佐紀も、嫌いではなかった。

しかし、伯母さんは、よくしゃべった。

伯父さんに聞いてもらえない分も、
佐紀に話しているのかと思う程、
よくしゃべった。

まあ、楽しく食事できるのはいい事なので、
佐紀も、楽しそうに、受け答えしていた。

ただ、放っておくと、
いくらでも食べさせようとするのには、
少し閉口していたが。


  「お風呂、沸いてるわよ」


好きな時にお風呂に入れるのも、
幸せな事だなと、佐紀は思っていた。

佐紀は、自宅通学と、何ら変わらない生活を
送っていたのだった。

その分佐紀は、勉強に部活に、
専念することが出来たのだった。