その日は、雨が降っていた。

ペンダントを渡した後、
祐太は、無口になっていた。

佐紀が何を話しても、
生返事ばかりだった。

平日の公園、しかも雨となると、
訪れる人もまばらで、今、二人の周りには、
誰もいなくなっていた。

祐太は組んでいた腕を、
佐紀の腰に回してきた。

“えっ”と佐紀は思ったが、
そんなに嫌な気持ちにはならなかった。


  “ちょっと、進展したかな”


佐紀は、そう思っただけだった。


湖のほとりに、休憩所があったので、
二人はそこにあるベンチに腰を下ろした。


二人はしばらく、湖の水面を眺めていた。

たまに佐紀が話しかけても、相変わらずの
生返事が帰って来るだけだった。

ちょっと気まずい雰囲気になって来たので


  「向うに、行ってみようか」


と、佐紀が立ち上がろうとした時、
腰に回していた祐太の手に、力が入った。

ハっとして横を見ると、
祐太の顔が、近づいて来ていた。


  “キタァーーーーー”


佐紀は、祐太に体を預け、
静かに目を閉じた

唇が重なると、佐紀の体から力が抜けた。

佐紀の心の中では、
3人の天使が飛んでいた。

天使が杖を振ると、佐紀の体は、
スライムのように溶け落ちた。