練習が終わった後、


  「お疲れ様でした」


そう言って佐紀は、更衣室を出て行った。

萩原先輩は、
佐紀が出て行ったのを確認した後、
キャプテンの矢島の元へ行った。


  「ヤジぃ、あんた、ちょっと、
   サキに、厳しすぎるんじゃないの?」


岡井先輩もやって来て、


  「そうだよ。サキ、
   カレシ、亡くしたばっかなんだから、
   もっと、優しくしてもいいんじゃね」


キャプテンは、苦悩を思わせる顔になり、


  「うーん、でもね、
   亡くしてすぐって、時間があると、
   落ち込むだけじゃない?

   だからせめて部活の間だけでも、
   忘れられたらなって」


  「それは、言えてる」


  「じゃあ、私たちも、厳しく……」


  「いやっ、それはいい。

   悪者は、私一人で、十分。
   あなたたちは、私のフォローに回って
   佐紀に、優しくしてあげて。

   逃げ場がないと、余計、
   追い詰める事になるかもしれないし」


  「そっかぁ、わかった。

   じゃあ、そういう事で……」


  「やっぱ、時が解決してくれるのを、
   待つしかないのかなあ」


  「う~ん、だよねぇ」


  「難しいよね」