佐紀が目を開けると、天井が映った。
病室の天井だった。
“やっぱり、夢かぁ”
佐紀は、夢で見たことを、おぼろげながら、覚えていた
夢を思い出そうとした時、パッと、
祐太の笑顔が現れた。
しかし、以前のような、喪失感や空しさは、
それ程感じられなかった。
心の疼きは残っているものの、
何か、懐かしさにも似た感情が、
漂っていた。
“やっぱ、祐太の笑顔は,
癒されるなあ”
佐紀は、祐太の笑顔が、大好きだった。
普段は仏頂面をしているけれど、
祐太が笑顔になると、それだけで、
佐紀も幸せな気分になったのだった。
「あら、起きたのね」
佐紀のお母さんが声をかけ、覗き込んだ。
「どうしたの?
なんか、ニコニコして。
もう大丈夫みたいね」
どうやら佐紀は、祐太の笑顔を思い出し、
佐紀も、笑顔になっていたようだった。
伯母さんが、
「前のお婆さん、亡くなったみたいよ」
そう言うと、佐紀は、
“うん、知ってるよ”と思ったが、
「そう」
とだけ、言った。

