佐紀が目を覚ますと、ベッドの上にいた。

あたりを見回すと、
どうやら、病院のようだった。

そして、ベッドの脇にいた、
伯母さんとキャプテンの姿が映った。


  「あっ、サキちゃん、気がついたのね。

   もう、びっくりしたわよ」


  「サキ、大丈夫?

   気分は、どう?」


  「大丈夫です」


佐紀の声は、虚ろだった。

そう言った後、佐紀が起き上がろうとすると
伯母さんが、


  「いいわよ、いいわよ、寝てて。

   大丈夫じゃないわよ。

   あなたこの頃、
   あまり食べてないでしょ。

   いつかこうなるんじゃないかと、
   心配してたのよ」


矢島も、佐紀の体の酷使を心配していた。

矢島のバスケット人生の中で、
これほどの必死さは、見た事が無かった。

こんな事をしていたら、
佐紀が、いつか倒れるんじゃないかと、
心配し、気を遣っていた。

そして、その心配が、
現実のものとなったのだった。


  「伯母さんから、全部聞いた。

   大変だったね。

   何も知らなくて、ゴメンね」


  「いいんです。

   私なんか………」


そう言いながら、佐紀の目尻から、
涙が溢れ、流れ落ちた。