アルテミアは、目を見開いた。

クラークは、アルテミアの反応を確かめながら、もっとも伝えたい言葉を口に出した。

「つまり、人は終わる。戦う術を…いや、生きていく術を失って」

アルテミアは、無言になる。

アルテミアの注意力が、落ちていることを確信すると、クラークは堂々と、ほくそ笑んだ。

「でも、それは仕方のないことだ。誰かの犠牲の上にある…力など、あってはいけないのだよ」

クラークは、ブラックカードを再び取り出すと、右手の人差し指と中指の間に挟み、

「よく考えることですね。では、また…」

頭を下げると、魔法を発動させた。テレポートだ。

アルテミアははっとして、クラークに近づこうとしたが、結界に阻まれた。


「待って!お母様の心臓のある場所は!」

必死に、手を伸ばすアルテミアの目の前で、クラークは消える瞬間、

「君なら、わかるさ」

その言葉を残して、クラークは安定者の間から消えた。

すると、結界も消えた。


アルテミアは、薄暗い部屋で、独り…崩れ落ちた。

「あたしは…どうしたら…」

自失呆然となったアルテミアは笑い…その後、涙が溢れてきた。

そして、心の中の何かが叫んだ。


「ウオオオオオッ!」


アルテミアが叫んだ瞬間、安定者の間に、銃を構えた兵士が、突入してきた。

「何だ?これは…」

部屋の惨劇を見て、驚く兵士達は、その疑問をとくことはできなかった。

アルテミアの絶叫は、空から無数の雷を呼び、防衛軍本部を直撃した。

そして、中からは……アルテミアの悲しみと怒りが具体化し、本部を内部から消滅させた。

多くの兵士や……そこにいた、すべての人を、この世から消し去った。



下からも雷が走り、崩壊していく建物の中から、6枚の翼を広げた天使が、飛び去っていったのを、見送る者は、誰もいなかった。