「リンネ様」

ツインテールのユウリと、ポニーテールのアイリは、

主が不在の城のテラスで佇むリンネの後ろに控えていた。


魔王ライが封印された為、

城の周りを覆う向日葵も枯れかけていた。


しかし、炎の魔神であるリンネには、どうしょうもできなかった。

なぜなら、

近づけば、燃やしてしまうからだ。

「リンネ様…」

睫毛を落とし、そんな向日葵を見下ろすリンネの表情を、側近であるユウリも、アイリも見たことがなかった。


「リンネ様!」

そんなリンネの様子に堪らず、ツインテールのユウリが立ち上がった。

「デスペラードをどうされるおつもりですか?お言葉ですが、あやつは魔王亡き今を狙い、我ら魔王軍を掌握しょうとしているのです!」

ユウリの言葉に、リンネは向日葵を見下ろしながら、答えた。

「それは、無理だろうな」

「どうしてですか!」

声を荒げるユウリを、隣にいるアイリがたしなめた。


「ユウリ」


「よい」

しかし、リンネはそれを遮った。

フッと口元を緩めた後、

リンネはユウリの方を向いた。

「理由は、簡単。デスペラードよりも、危険な女がそばにいるからよ」

「危険な女?」

ユウリは眉を寄せた。

「そう…」

リンネはまた、向日葵に目を向けると、

「愛する男を、自分のせいで失った女…」


「そ、それは…」



クスッと、リンネは笑うと、

ゆっくりと目を細めた。

「あの女が、やろうとしていることは、赤星浩一の復活。それは同時に、魔王ライ様の復活を意味する」

「…」

ユウリとアイリは、無言になった。

「アルテミアが、やろうとしていることはわかっている。赤星浩一が、自らを犠牲にした理由。それを変えたいのよ」

リンネは、テラスの手摺を握り締めた。

「しかし、それでも、赤星浩一は変わらない。それを、アルテミアも気付いている。だけど…もしかしたら…その思いだけで、あの女は動いている」