「赤星…」

アルテミアの全身にも、矢が突き刺さっていた。

「浩一!」

アルテミアはまた、吐血した。

普段なら、この程度の攻撃は避けることはできた。

しかし、今のアルテミアにはその力がない。



(こんな…最後)

アルテミアの瞳から、涙が流れた。

悔し涙だ。



もう涙を流すことしかできない己も、恥じた。

「ああ…」

アルテミアの視界は、涙で曇っていた。


(せめて…)

アルテミアは目を瞑った。

瞼の裏では、はっきりを姿が見える。



(赤星に会いたい…)




もう一度だけ…


会いたい。



「浩一…」

瞼を閉じていても、涙は流れた。






「初めてだね。下の名前で、呼んでくれたのは」




「え?」



温かく…とても、温かい声がした。

その声を聞くだけで、体が温まった。


「嬉しいよ」

目を開けると、まだぼやけているが、赤星浩一がいた。



「赤星…」

驚くアルテミアに、僕は微笑みかけ、ゆっくりと屈むと、アルテミアと視線を合わした。

「アルテミアの泣き顔なんて、初めて見た」

微笑む僕の顔に、アルテミアは顔を背け、

「あ、あたしが泣くかよ!」

強がってみせた。

「そうだね…。アルテミアはおっかないから」

「な!」


アルテミアは、僕と話すだけで、元気になったように見えた。


(不思議だ…)

アルテミアは顔を背けながら、横目で僕を見つめた。

さっきまで、まったく動かなかったのに、首が動き、顔が微笑んでいるのが、わかる。

アルテミアは初めて…実感した。

これが、愛するということなのだろう。




「アルテミア」

僕は真剣な顔になり、アルテミアの肩を持つと、引き寄せ、

抱き締めた。


「心配しないで…君は、死なない。死なせないから」