プルルルル…。

電話が鳴った。

入院する為の準備をしていた…恵子は、慌ただしく受話器を取った。

「はい」

冷静な…時には、冷たいと取られる恵子の口調よりも、

さらに冷静な声が、聞こえる。

「元気?」

しばらくの間の後、

2人は爆笑した。




「何?かずちゃん?」

それは、海外…フランスからの国際電話だった。

「久しぶりね。ママ。元気にしてた?」

「かずちゃんこそ、元気なの?」

「少なくても、ママよりは…。啓介からきいたわ。入院するんでしょ」

恵子は、クスッと笑い、

「大したことないのよ。啓介は、大袈裟だから…」


「ママ…」

突然、和美の口調が変わる。

「何…?」

「気をつけてね」

「ありがとう」

恵子の口調の…元気な様子が…

和美には、不安に感じられた。

「ママ…」

何か言おうとした和美の言葉を、

恵子は、遮った。

「かずちゃん…アメリカに活動を移すんだって?」

「短期間だけよ…。ファンに呼ばれてるから。歌手なら、行かなくちゃ…」

「かずちゃん…」

「ママ。あたし…今…充実してるの。歌手として。例え、啓介がいなくても…」