ジャスミン

溢れそうになる涙をグッと我慢する。茉莉のそんな様子は颯太郎には手にとるように伝わっていた。

(こんな辛いこと茉莉に言わして…俺は何やってんだ。)

肩を小刻みに震わせながら必死に耐えようとする茉莉を本当なら今すぐにでも抱きしめてやりたいーー。でもそれは、自分の為に必死で頑張っている茉莉をもっと苦しめてしまうことも分かっていた。

颯太郎は不甲斐ない自分の握り締める拳を力いっぱい膝の上に押し付けながら自分のするべき事を考えた。


『そうか…分かったよ。俺もそろそろ親父の跡を継ぐ準備を本格的に始めなきゃいけなかったんだ。…お互いにきっとその方が良い。』

颯太郎は茉莉の背中に向けて精一杯の平静を装う。

『…そうね。』

茉莉はか細い声でポツリと呟いた。


街灯があるだけの公園は静まりかえっている。立ち尽くす二人の顔にヒヤリと冷たい感触を感じる。茉莉はそれを手で触れながら空を見上げる。

『あ…雪。』

その声に颯太郎も上を見ると空から白いものがポツリとポツリと降ってくるのが分かる。