ジャスミン

『いや、俺の方こそ楽しかったよ。ありがとうな。』

『……。』

再び二人とも無言になる。互いにどうやって切り出そうか迷っている証拠なのだろう。でも茉莉は自分が言わなくちゃと決めていた。

スーッと息を静かに吸い込むと口を開いた。

『颯太郎…私ね考えたんだけど、この世界に入って今まで無我夢中に頑張ってきて、今度のショーは私の夢だったの。やっとそれが叶う時に颯太郎に出会って、色々な事が起きて…こんなんじゃ納得のできるものにならないんじゃないかなって。もっとちゃんと集中したいんだよね、私不器用だからさー恋愛と仕事の両立は向いてないみたい。だから…だから…私との関係をゼロに戻して欲しいの。』


言い終えると自然と下を向いていた顔を残る力を振り絞って颯太郎の方に向ける。

(泣いちゃだめ!後ちょっと頑張れるでしょ‼︎)

必死に心の中で自分に叱咤する。


顔をあげると颯太郎は何も言わず、ただ切なそうに茉莉を見つめていた。

その状況に耐えれなくなった茉莉はその場を立ち上がると彼に背を向ける。