『~いい匂い。』

部屋全体にコーヒーの良い香りが漂っていた。

『簡単なものだけど食べるか?』

ダイニングテーブルにはトーストとベーコンエッグ、ヨーグルトまで並べられていた。

『女子力高っ!』

『なんだよ、それ。』

自炊をしない茉莉は尊敬の眼差しで見つめる。そんな茉莉を見て颯太郎が苦笑いを浮かべた。


『さぁ、食べるか。』

颯太郎はミルクがたっぷり注がれたカフェオレを茉莉に渡し、自分はブラックコーヒーを手に取り椅子に座る。

茉莉もカップを受け取り、向かいの椅子に座る。『いっただきまーす。』と手を合わせてからカフェオレに口をつける。

『美味しいっ。』

砂糖の甘味が全身に染み渡るのを感じた。

『でも何でカフェオレにしたの?』

茉莉はクールな見た目の為、周りが勝手にブラックコーヒーしか飲まないだろうと勘違いされる。でも実はブラックなんて大嫌いで、砂糖をいっぱい入れないと飲めないのだ。

『何となくそっちの方が好きそうな気がしたんだ。』

颯太郎は茉莉の様子に満足そうに答えると自分はブラックコーヒーに口をつけた。

茉莉もどことなく嬉しいと思う自分に、頬を緩めるのだった。


お互い無言だが、昨日のような居心地の悪いものではない。

ゆったりと少し遅い、ブレックファーストが進んでいくー。