ジャスミン

颯太郎は茉莉の胸元に顔を埋める格好となる。茉莉がソファに膝を立てた状態で彼を頭部から抱き締めた為である。

颯太郎は息苦しさよりも、まるで母親に温かく抱き寄せられるような感覚に陥り、安らぐ気持ちと共に軽く目を閉じる。


『颯太郎…聞いて？』

『…うん。』

その状態のまま、茉莉は無意識なのか右手で背中を優しくトントンしながら話し出した。

『今の颯太郎の話を聞いて正直私に全てを受け入れる器があるのか自信ない。私も確かに仕事に誇りを持ってるし、それなりに頑張ってきたけど、颯太郎のような大きなものを背負ってきた訳じゃないし所謂一般家庭で大した苦労もなく育ってきたと思うから。
…でもこんな私だけど、颯太郎の隣りであなたの背負っているものの少しでも軽く出来たらって思うんだ。

何より私自身があなたが居ないともうダメなんだって身にしみて分かったから。今はそれじゃダメかな？』

茉莉は言い終わると、またギュッと颯太郎を抱きしめる力を強めた。