ジャスミン

『私は颯太郎に出会って、今までがどんだけ味気ないものだったんだって実感してるとこだけどね！…私、今すっごく幸せだよ？』

茉莉にしてみればこんな台詞恥ずかしくて口にしたこともないが、どうしても今伝えたくなったのだ。


『…そんな風に言って貰えて俺も幸せだな。』

颯太郎が笑みを浮かべて少しの間沈黙すると、茉莉の耳元で囁いた。

『家に着いたらもっと幸せにしてやるよ。』


茉莉は更に顔を紅く染めて俯きがちで歩く。そんな様子を覗き込むように確認すると鼻唄まじりに満足げな颯太郎は歩みを進めて行った。


半ば連行されるように相変わらずその存在を主張するマンションの前に立つ。

途中で簡単なスキンケア用品と恥ずかしながらも下着を購入し、何とかお泊まりできるよう身支度は整った。

服は明日の朝一に颯太郎が車で家まで送って行ってくれるという言葉に甘えることにした。

『何だかここに来るの久しぶりかも！』

『確かにな。でも、これからはいつでも来ればいいさ。』

考え深げに茉莉が呟くと颯太郎も同調して言葉を付け足す。