ジャスミン

『茉莉ちゃんはまだ颯太郎さんと話すことがあるでしょ？』

美香は人差し指を出してウインクをする。相変わらずその仕草が様になっている。

『茉莉…俺ももう少し一緒にいたい。』

『あ…う、うん。』

颯太郎の普段なら絶対言わなさそうな言葉にドキッとした茉莉は頬を染めながら頷いた。


『ふふ♡じゃあ、今度はゆっくりダブルデートしようね！』

『茉莉ちゃん、また！颯太郎は明日な。』

大樹と美香は二人に挨拶をすると仲良く腕を組んで店を後にした。


『……。』

改めて二人きりになると何を話して良いのか分からなくなってしまう。

『なぁ、頼みがあるんだが…。』

不意うちで颯太郎から話しかけられたことに嬉しさでパッと颯太郎の顔を見つめる。

『うん。なに？』

余りにもジッと見つめていたからか、颯太郎は気まずそうに顔を背ける。

ズキッ。
颯太郎から視線を外されたことが思いの外茉莉にダメージを与えた。その表情の変化に気付いたのか慌てて話し出した。