『は?おまえ何なの?ふざけるな。』

颯太郎はなお一層冷ややかに汐里を見下ろす。

『何って、汐里は自分の気持ちを伝えてるんですよ!…それに、倉田さんより私の方が世間体的にもご両親も納得されるかと思うんです。』

『…やっぱりそういうことか。』

颯太郎はより一層冷たく、そして鋭く睨みつけると、汐里をおいて去って行こうとする。

『あっ!待ってください、これ忘れてましたよ。』

汐里はその様子に全く動じることもなく、携帯を颯太郎の手のひらに両手で置く。

『……。』

颯太郎は触れられた手の感触に不快感をあらわにするが、ジッと携帯を見つめるとポケットにしまうとそのまま歩き出した。

『ふふ。お疲れさまでした〜!』

汐里はその後ろ姿を見送ると、夜の繁華街へと消えて行ったーー。