ジャスミン

唇に当たる感触に驚き過ぎて、目を見開く。キスをされていることが分かると力一杯両腕を伸ばし抵抗する。

『いやっ‼︎はぁ、はぁ…な、何するの⁉︎』

当の西川は悪びれた様子もなく、唇を舌で舐めとる。

『ふっ…ごちそうさまです。』

『な、何でこんなこと…。』

茉莉は泣きそうになるのを必死に我慢しながら西川に聞く。

『何でって、ずいぶん野暮な事を聞くんですね。もうさー、俺にしとけば?…あーぁ、もうちょっと長期戦でいく予定だったけど、俺そういうのやっぱり合わないんだよねー。』

突然口調が変わった彼にますます戸惑い、眉間に皺を寄せてしまう。

『何言って…。』

『あんなに凝視してたらバレバレだよ。でも茉莉さん、あの課長さんがどんな人か知ってるの?金子グループの次期後継者。遊ばれてるんじゃないの?現に隣にいた三上汐里は本社専務の姪らしいし、それなりに決まった人がいると思うのが普通だと思うけど?』

次々に彼の口から出てくる言葉で鈍器で頭を殴られたような気分になった。

取り敢えずこの場から離れたい…茉莉はグッと強く拳を握ると、何も言わずに改札口に向かって歩き出した。

西川は呆然と歩き出す茉莉を見て、フッと鼻で笑い軽く右手を挙げて、そのままポケットに突っ込みながら夜の繁華街へと消えて行ったーー。