ジャスミン

『っ⁉︎あっ…西川くん…。』

ホッとしたような残念に感じてしまうような微妙な気持ちになる。

『…僕じゃなかった方が良かったですか?』

掴んだ手首を離すこともなく、普段見せない真剣な表情をする彼に戸惑ってしまう。

『な、何言ってるの…ところでどうしたの?』

茉莉はなるべく冷静を装い尋ねる。

『こんな時間に茉莉さんを一人で帰せる訳ないでしょ⁉︎送って行きます。』

『えっ!大丈夫だよ。まだ皆いるでしょ?』

手首を掴む彼の手を離しながら、なるべく明るい声色で断る。

『いえ!これは決定事項なんで‼︎』

有無を言わせないように断言すると再び茉莉の手首を掴み、今度は駅の方へ向かって歩き出す。

『ち、ちょっと待って!痛いよ。』

手首を引っ張られスタスタと歩く西川に抗議の声をあげる。

『あっ、すいません。つい…じゃあ、これで。』

手首の痛みから解放されたと思った次の瞬間、手のひらに温もりを感じる。

『茉莉さん、体調良くないし、これ以上は妥協できませんからっ!』