定時になると、鼻唄混じりの大樹に強引にタクシーに乗せられ連れて来られたのは、20分ほど走らせた場所。


普通の居酒屋。

何故あえて此処まで?と思いつつ、威勢のいい店員たちの掛け声が響く店内に足を踏み入れた。

通されたのは個室のように仕切られた場所。お互いスーツの上着をハンガーに掛けて、四人用のテーブルに向かい合わせに座った。


『とりあえず、ビール?』

大樹に聞かれ、「そうだな。」と答えると手際よく店員に注文をする。

適当に摘まめるものをと、枝豆や刺身の盛り合わせなどを頼み、『お疲れっ!』と冷えたビールの入ったグラスを合わせた。

お互いの近況など仕事の話を交わし、ビールを飲む。

『そういえば、話したいことって何だ?』と俺が切り出す。

『…あ~、もう少しかな?』と大樹が意味不明なことを言う。

『はっ?』と眉間に皺を寄せると、『いらっしゃいませ~!』と威勢のいい店員たちの声が響く。

『連れが先にいるんです~。』と甘ったるい女の声が聞こえてきた。


『みっかり~んっ!』

と大きな声が意外と近くから聞こえると思ったら、大樹が個室の入口から手を振りながら呼んでいる!

『はっ!?おまえ…』

悪い予感しか考えられなくなり、大樹を一睨みしてビールを煽った。