ジャスミン

ピッ。

すっかり、定番になりつつあるカフェオレに口をつけると思い出すのは颯太郎のこと。

(ちゃんと寝てるのかなぁ。)

颯太郎のことだ。朝の感じから熱があっても動けるならば、仕事をしていそうな気がする。

『…早く帰ってあげなくちゃ。』

頬を緩め呟く。

茉莉にとっての息抜きは、カフェオレというより、それを飲むことで颯太郎のことを考える時間なのかもしれないー。


『よしっ！』

茉莉は椅子に座ると、色鉛筆を片手にスラスラと手を動かし始めた。

先程までのことが嘘のように勝手に手が動いていく。こうなったら茉莉は描き終えるまで、誰が声を掛けても気づかないほどの集中力を発揮する。

同僚も、充分周知の事実のため、彼女の様子を温かく見守っていた。


『…出来た！』

前のデザインとは比べ物にならない仕上がりに笑みが溢れる。

その笑顔を見た男女問わず誰もが頬を紅く染めているが、当の本人はそんなことに気づくこともなく満足気にファイルに綴じていく。