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花は綺麗だ。

ビックリするぐらい純粋で、いつだって笑ってる。



花といるのが好きだった。

穏やかで優しい花との時間は、温かくて心地良かった。





だけど俺は風だから。


1つのところに留まることはできなかった。




花の様子がおかしかったのに。








「花は」

「雪花は還ったよ」


どっしりとした大木は、静かに言った。




雪花は、もうどこにもいなかった。








悲しくて悲しくて。

寂しくて苦しくて。



びゅうびゅうびゅうびゅう世界を駆けた。




どんな景色を見ても。

雪花はどう言うかなと思ってしまう。








ああ、ああ、ああ!



こんなに大事だったんだ。
こんなに大切だったんだ。






嘆いて荒れ狂う俺を、優しく偉大な父さまが呼んだ。



「風の精、風の精。
愛しい我が子。
この世界を嘆かないでおくれ。
この世界が嘆いてしまう」

「ならば父さま、俺の願いを聞いてください。
俺は––––––」

「・・・わかった。
おやすみ、私の愛しい風の子」




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