「…俺は卑怯だ。 希美の弱味につけ込もうとしてる」 「…っ」 「…それでも希美が俺を選んでくれるなら構わない」 「…もう、いい」 「…俺は、希美が好きだ」 「…っもういいってば…!」 「…こんなときに卑怯だと思うけど、」 「…や、めてよ…」 離れようとしても腕を力強く掴まれて逃げられなかった。 その愛しいと言わんばかりの瞳から。 欲に塗れた狼のようにギラつく瞳から。 逃がさないと私を捕らえて離さない瞳から。 「…俺を、選んで」 逃げられなかった。