「あ、壱縷、先行ってて」 「…」 「…睨まないでよ。ちゃんと一緒に帰るから。傘忘れただけ」 私が逃げると思ったのか。地鳴りがズゴゴゴゴと聞こえてきそうなほど睨まれてしまった。 ただ傘を忘れただけなのに。 どんよりしてる空はいつ泣いても可笑しくない。 「昇降口で待ってて」 「…」 「壱縷」 「…分かった」 渋々頷いた壱縷に、私も満足気に頷く。 そして「すぐ行くから」と言い残して踵を返した。