「…誰にでも言うわけじゃない」

「ふうん」

「…希美、だけ」

「そう」

「…可愛いって思うのは希美だから」

「はいはい」

「…」

「終わり?じゃ、もう本返してくれる?」





手を差し出せば、また睨まれた。何故だ。


そしてそのまま本を放り投げられた。ブックカバーが外れて本は床に直撃。悲惨な本の姿に私は声にならない悲鳴を上げた。


昨日買ったばかりなのに!


慌てて本を追いかけて拾うも、壱縷はツーンとそっぽを向いていた。ばか。