「しかし…身を乗り出すのは…被害者と同じ事になりかねません」
「いや…アイツの場合は本望なんじゃないか?」
「だな…いつか怪我するだろうな」
「怪我で済めばいいけど命を落としかねないか?」
平気で笑い話にする一課の刑事達の声が聞こえていない様子で麻衣は部屋をウロウロする。
「麻衣さん!」
導達の前を通り子供部屋へ入る。
そこは(子供部屋)とは名ばかりな殺風景な部屋だった。
「川島さん…」
我に返った様に麻衣が導を呼ぶ。
「はい…麻…衣さん?」
「この子供部屋…というより、この家…何かが足りない気がする」
導は改めて部屋を見渡す。
生活の様子はある。
畳まれた子供服、玄関の靴、おもちゃが乱雑に入れられた箱。
「…テレビ?」
決して広くないアパートの一室にテレビが見当たらない事に気付く。
「そうだ…テレビ…ステレオとかも無いからかな?」
麻衣はおもちゃ箱を開けてみた。
「どう言う事ですか?」
まだ麻衣の考えに追いつけない導もおもちゃ箱を覗く。
「川島さんが子供の頃…何で遊んだ?」
おもちゃ箱を漁る麻衣が振り返らずに聞く。
「何…って…好きだった戦隊物や怪獣が出て来るヒーロー物のおもちゃやピアノとか…」
「ピアノ弾けるの?」
「まぁ…姉の影響と言いますか…それが何か?」
「音…」
「音ですか?」
「音がする物が無いんだよ…テレビも無いから戦隊物とかも観ない、知らない…」
何かに気付いた麻衣は自分達が部屋に入って来た時から婦警の問いに答えようとせずに肩を落とす男児の母親の前に詰め寄る。
「ちょっと…埜守さん…やっと少し落ち着いた所なの」
麻衣の気配を感じ、一点を見つめたままだった母親が麻衣を見上げる。
「すみません…ちょっと…麻衣さん」
導が謝る。
「…そんなやり方じゃ彼女は答えてくれない…」
「なっ…私だって一応は心理専門なんだけど!」
「知ってる!でも、彼女には通じない」

