【櫂side】 「最近、みんなボーッとしてるよね」 突然、そう言い出した慧。 「…あんな事があったんだからな」 「当たり前だろ」 伊織と、渉が言う”あんな事”とは、決してこの場では口に出すことを許されない暗黙のルールみたいなものだ。 「……。」 カラン、と近くに置いてあった空き缶を蹴る。 …落ち着かない。 久しぶりに会ったんだ。 きっと、この場にいる全員がそうだろう。