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「…っは、…はぁっ…」
走る足を止めて、両膝に手をつく。
息が苦しい。
上手く呼吸ができない。
どれぐらい走ったんだろう…
私が姫だった頃は、送り迎えしてくれていたから…歩いて倉庫に行ったことなんて、ない。
だけど道は覚えている。
あの日の記憶も、そう。
だって、
今でも鮮明に浮かぶの。
みんなの、笑った顔が。
つい最近のことのように蘇る記憶。
もう半年も前のことだけど、私はまだ覚えてるよ。
みんなはもう、私との思い出なんて忘れちゃってるかもしれないけど…
私と過ごした日々なんて、今じゃもうみんなにとって要らないものなのかもしれない。
それでも、私は忘れない。
裏切り者だと言われたあの日のことだって、忘れない。
辛いことを忘れちゃったら、楽しかった日々まで忘れてしまいそうだから。


