ギュッとこぶしを握り締める。 「頑張って、仁。」 そうつぶやくと、聞こえてないはずなのに、仁が笑った気がした。 仁が朔の頬にこぶしを入れる。 朔が飛ぶように横に倒れた。 その動作の一つだけで、誰もが喧嘩をやめた。 「これで終わりだ、百鬼。」 仁と朔に視線が集まる。 朔は立ち上がれそうになくて、悔しそうに唇を噛みしめた。 仁が朔を見据えて、話しかけた。 「次、手を出したら……百鬼をつぶす。」 その声は低くて、圧があるものだった。 初めて聞く声で、言われてない私が怖く感じた。