横たわっていたのは若い青年だった。
「大丈夫ですか?」
松明の明かりで青年の顔を照らすと、青年は目を閉じて気を失っていることが分かった。
ラクダから降り、声をかけながら青年の頬を軽く叩いてみるものの反応がない。
私はそっと自分の人差し指を青年の鼻に近づけた。
ーー大丈夫、まだ息はしてるわ。
「お嬢様、この者にかまっている時間はございません。先を急ぎましょう」
「それはだめよ、マナラ」
私は持っていた絹の布で、青年の顔に薄く積もった砂を払った。
「水は?」
「お嬢様の分がなくなってしまいます」
「いいのよ、私はこんなに元気なんだから」
マナラから水の入った容器を受け取り、私は青年の口を開いて勢いよく水を流し込んだ。
