今日の宴は屋敷の大広間で行われる。


大広間に入ると中央に長テーブルが置かれていて、召使い達がせわしく掃除をしていた。


「椅子が二つ多いわ。今日はジョミン君のご両親はお招きしていないのよ」


「申し訳ございません奥様、すぐに片付けます」


1人の召使いの少女が椅子を持ち上げようとする。


しかし椅子の背もたれは大きく、頑丈な作りで重い。


手こずっているけれど、大丈夫かしら…


様子を見ていると、すらりとした召使いが駆け寄ってきた。


「ラムリ、俺が持って行くから」


アラン……!


「頼んだわ」


駆け寄って来たのはなんとアランだった。


ラムリと呼ばれた少女はアランに椅子を任せ、別の場所に移動する。


アランは私に、気づいていないみたい。


「あそこにジョミン君には座っていただく予定よ。で、シャナはその前に座るの。いいわね?」


「はい、お母様…」


私はアランをついつい目で追ってしまう。


「ジョミン君はあなたの婚約者の候補よ。しっかりマナーを守って、それで…」


「分かってるわ」


アランのいる空間でジョミンさんの話をしてほしくない。


ジョミンさんのことがアランに知られたら、ますますアランが離れて行ってしまう気がするから。


「では行きましょうか。今からもう少しお化粧しましょう」


マナラとお母様に連れ出される私。


アラン、一度でいいからこっちを見て…