「シャナお嬢様。もう今日はここに泊まって、明日町へ帰りましょう。夜は気温が下がりますし危険です」
「嫌よ、早く帰ってお父様に会いたいわ」
この会話を世話役の女、マナラとしてからどれぐらい時間が経っただろうか。
ラクダに揺られ、流れていく砂漠の風景を眺めているのも飽き飽きしてきた。
暑かった気温はぐっと下がりはじめ、砂漠に夜の訪れを告げている。
顔をショールで覆っているものの、寒さが身に沁みる。
「あと少しで町かしら?」
「まだだいぶかかりますよ」
マナラの言うことを聞いて、今夜町へ戻るのはやめておけば良かった。
共に移動している召し使い達も顔を完全にショールで隠し、無言で疲れた身体を動かし歩いている。
