アラビアン☪ナイトー砂漠の騎士ー

昔、酒屋でどこかの国の商人がこう言っていたのを覚えている。


ーーキスより甘い蜜はない。


どれほど甘いのだろう。


どんなことにも大抵は無関心な俺だが、これだけには好奇心が疼いた。


俺は今、キスどころか砂漠のどの辺りで横になっているのかも分からない。


巻き上がる砂と強い光で目は開けられない。


こんな俺に、誰かに口づけをする資格なんてない気がする。


ああ、喉が渇く。
皮膚が焦げる。


俺はこのまま、この広い砂漠に埋れて行くのかーー


それでもやっぱり、死ぬのは嫌だった。




なぜか、まだ死んではいけない気がしていたーー