5歳の時。
私は世話係のマナラや、召し使いたちの目を盗んで、屋敷の中を冒険していた。
あの日はたまたま両親は旅行中で、誰も自分を見張る人はいなかった。
その嬉しさでうきうきしながら、私は暗く長い廊下を進んでいく。
……いつもだったらこんなところ、見張られていて絶対に入れないわ。
けれどあの日は、誰も見ていなかったから。
私は廊下の突き当たりにある、禁断の扉にたどり着いてしまった……
ーー禁断の扉。
お化けが出るから入っちゃいけないよって、お父様に言われていたのに。
好奇心に負けて、私は足を踏み入れてしまったの……
部屋に入っても、お化けは出なかった。
その代わりにあったのは。
部屋の中央に、小さなテーブル。
その上に、光沢のある黒い石が置かれていた。
そもそも部屋に窓はなく、光はどこからも入ってきていない。
それなのにその石は、怪しく反射して光っていた。
ーーこれは危険な石。
本能がそう告げている。
しかし私の目は石に釘付けだった。
操られるようにして、私は石に近づいていく……
そしてそっと、石に触れてみた。
