手が届く距離なのに。



「だ、大丈夫大丈夫! 全然平気……」

「足とか、捻ってないか」


目の前まで来た峰はそのまましゃがみ込んで、あたしの足首をそっと触る。

その瞬間、ドッと心臓の動きが速くなるのを感じて若干焦る。


「ほ、ほんと、あたし頑丈だから! ほら!」


あたしは足首をパタパタと動かしてみたけれど、案の定少しだけ痛んだ。
それでも、なんとか耐えて笑って見せると、峰はまだ信用しきってないような表情であたしを見る。

ぱちっと視線が合って、あたしはまた昨日のことを思い出してしまったせいで峰から視線を逸らす。

すると、自販機の前にいた女の子がたたっと走ってこちらに来た。 手には炭酸水のペットボトルを持っている。

……何この子、ものすごく可愛いんだけど……。

色素が薄いふわふわで柔らかそうな髪に、白い肌でとっても華奢。
まん丸の目とピンク色に染まった頬に……え、可愛い……。

思わず目を奪われていると、女の子は峰に「これ、ありがとうございましたっ」と早口で言って、そのまま小走りで階段を登って行った。

状況が掴めず、なんのこっちゃのあたしは峰を見返す。