手が届く距離なのに。



知らないうちに野々花に心配かけちゃってたんだな……しっかりしないと。

足元に視線を落として階段を降りていると、突然「ガンッ」と何か硬い物がぶつかるような大きな音がした。

あたしはその音に驚いた拍子に、階段を踏み外して「ギャッ」となんとも不細工な悲鳴を上げてそのまま下へずり落ちた。


「いった〜……」


咄嗟に手すりを掴んだけれど、打ち付けたお尻と腰がジンジン痛む。

階段が残り3段だったのが幸いだった……にしてもお尻痛すぎる……。


「麻虹?」

「ヒッ」


ふいに前方から名前を呼ばれ、階段に座り込んだ状態のまま顔を前へ向けると、そこには自販機の前に立つ峰と知らない女の子がいた。


「何してんだよ、大丈夫か」


峰はそう言いながら、こちらに向かってくる。

階段をずり落ちたことと、不細工な悲鳴を峰と女の子に聞かれてしまった恥ずかしさに、あたしは身体がカアッと熱くなるのを感じた。