「あー!ココア、飲んだ?!」
「生き返った〜」
ちょっと、人の話聞いてなさすぎでしょ!
あたしは峰から缶を奪って中を覗いてみる。
「うわっ、全部飲んでるし」
「まあまあ、そんな怒るなって」
どこか勝ち誇ったような声で言う峰をあたしは再びジイッと睨む。
ていうか、なんであたしが峰に慰められる側なんだ。
いつもこうだ。あたしはいつも峰に勝てない。
まず身長は論外。小さい頃から毎日牛乳を飲んでいるけれど、未だに効果が出ないのか、昔から今までもわたしは列の前の方。
顔だって、自分では認めたくないけれど周りの子に比べたら全然幼くて恥ずかしい。
運動だって得意じゃないし、勉強だってそんなに出来るわけでもない。
ましてや峰は、運動は出来るし勉強は理数系が得意であたしはいつも教わる側。
うわあ……なんかわたし、ロクな取り柄もないんだなあ。
思わずため息がこぼれそうになったとき、同じクラスのケイちゃんが教室に入ってきた。
「峰、メッセージ見てねぇだろ。帰ったかと思って探したわ~」
ケイちゃんは疲れたような口調で言いながら、CDらしき物をヒラヒラと揺らしながらこっちに向かってきた。
「あれ、峰なんか顔色悪くね?」
「ボタン押し間違えて、ブラックコーヒー買ってきちゃったんだって」
「ばか、言うな」
「えっ、やっぱり間違えたんじゃん」
あたしがそう言うと、ケイちゃんは呆れたように鼻で笑う。
「自販機のボタン押し間違うのお前くらいだよ」
「うるせえ」