手が届く距離なのに。



「わっ、ありがとう。 泣いてもいい?」

「それは困る」


さっそくジュースを開けてゴクゴクと勢い良く飲んで「プハーッ」と言う野々花の姿が、朝には少し不釣り合いに見えてあたしは笑う。


「はあ、生き返ったわ〜。 あの生徒指導、委員会の担当でもないのになんで一番張り切ってんのよ」

「ほんとだよね。 それなのに一番怒ってくるしさあ」

「あんたは怒られるの当然でしょ」


いつも通りなケイちゃんと野々花を見て、あたしはどこかほっとする。

その時、予鈴がなったと同時に担任が教室に入ってきて、2人は自分の席へと戻った。

あたしも前に向き直って、未だ少し熱い身体が冷めるよう小さく深呼吸をする。

……さっき、咄嗟に昨日のことを峰に聞こうとしたけれど聞かなくてよかった気がする……。

きっと、昨日のことはもう峰の中で無かったことになっているのかもしれない。

だったら、こんなに深く考え込む必要もなくなるんだから、あたしもさっさと忘れてしまおう––。

あたしは気持ちを切り替えようと誰にもばれないように小さく深呼吸をして、ノートを開いた。