手が届く距離なのに。



「ねえ、昨日––」

「あ、来た」


峰は何も気付いていない様子で、教室の扉の方に視線を向けている。

そこには、疲れた様子の野々花と相変わらず笑顔のケイちゃんの姿があった。


「麻虹〜、こいつ本当最悪なんだけど!」


野々花はケイちゃんを遠慮無しに指を差しながらこちらに向かってくる。


「昨日あんなに言ったのに、見てこの変な色!」

「野々花ちゃん、落ち着いて」

「なんでお前が慰めてんだよ」


あたしは野々花に自販機で買ったジュースを「お疲れ様」と言って渡す。