手が届く距離なのに。



カフェラテを2本、机の上に置くと峰は少し眉を寄せてあたしの顔を見た。


「まさか、本当に自販機の分買い占めてきたのか……?」


一瞬なんのことかと思ったけれど、昨日冗談でそんなことを言ったなと思い出す。


「ごめん、買い占めてきた方が良かった……?」

「ばか、んなわけねえだろ」


峰は笑いながら「わざわざ、ありがとな」と言って受け取ってくれた。


「あれ、炭酸なんて珍しいな」

「これは、野々花に渡そうと思って……ケイちゃん、髪色明るいままだったから」

「懲りねえなあいつ」


峰は呆れたように笑って、カフェラテの蓋を開ける。

あたしは自分でも呆れてしまうほどぎこちない動きで自分の席へついた。


「あ、麻虹。 寝癖」

「えっ、ど、どこ」


あたしは自分の髪を触って寝癖を探すけれど、うまく見つけられない。