手が届く距離なのに。



「ああっ、なんでっ」

「麻虹ちゃん!おはようー!」

「ちょっと、何さりげなく中入ろうとしてんのよ」


そこには野々花と明るい髪色が太陽でキラキラとしているケイちゃん、そして強面の生徒指導の先生もいた。

ケイちゃんはその強面先生にガッチリ腕を掴まれているのに物怖じせずこちらに手を振っている。

逃げないように完全に捕らえられてるじゃん……。

あたしはケイちゃんに手を振り返して、カフェラテを2本取り出す。 

……自販機って、ボタン一回押したらお釣り戻ってこなかったっけ?

不思議に思いつつ、あたしは野々花が好きなブドウ味の炭酸ジュースのボタンを押して買った。

野々花が教室に戻ってきたら、お疲れ様の意味も込めてこれをあげよう。

飲み物を3本抱えて教室に戻ると、峰は椅子に寄りかかってスマートフォンを見ている。

なんか、いつも以上に普段通りすぎでは……?


「……峰、き、昨日はありがとう」