手が届く距離なのに。




「飲み物、買ってくる」


このままここにいるのは息が詰まりそうで、あたしは席を立って足早に教室を出た。

自販機がある昇降口に向かうために階段を降りている途中で、はあ、と息をついた。

……な、なんで峰はいつも通りで、あたしだけこんなにから回ってるんだ。

え……もしかして、あれ全部あたしの勘違いかなにか?

いや、でも峰が言ったことを一語一句思い出せるんだからそんな筈は……。

ひとりで考えていても仕方がないと思い、自販機の前に立って千円札を入れる。
いつも峰が飲んでいるカフェラテを探すと、隣にブラックコーヒーが並べてあってあたしは昨日のことを思い出す。


「さすがにこれ押し間違えないでしょ……」


そう思いつつ、万が一押し間違えることがないの様に慎重にボタンを押した時、外の方から名前を呼ばれ視線を向けた。

その拍子に、何故かあたしはもう一度ボタンを押してしまいもう一本カフェラテが落ちてきた。