手が届く距離なのに。



「どっか行くの」

「うわっ」


唐突に声を掛けられて、あたしは驚いた拍子に再び椅子に座る。

見上げると、そこにはまだ眠そうな顔をした峰の姿。


「び、びっくりさせないでよ」

「なんでびっくりするんだよ」


峰は呑気に言いながら席に座る。 

驚いたせいか、どきどきと自分の心臓がうるさい。


「なんか買いに行くのか」

「えっ、うん」


自分でも可笑しなくらい動揺しているのに、峰には全く伝わっていないらしい。