手が届く距離なのに。




昨日のことを話したら、野々花はなんで思うだろう。

流石にびっくりするだろうな……それか“そんなの冗談でしょ〜!”と思い切り笑い飛ばしてくれるかも。

それに、今まで恋愛の話は専ら聞き役だったあたしよりも野々花の方が経験や知識があるのは確か。

だけど今は委員会の仕事の邪魔をしてはいけない。


「何もないよ」

「そう? ならいいんだけど」


野々花はどこか納得してないような表情だったけれど、あたしは先に教室へと向かった。

まだ峰とケイちゃんは登校していないらしく、あたしはひとり席について椅子の背もたれに寄り掛かる。

学校に来る道では気付かなかったけれど、今日は昨日と違ってよく晴れている。