ふと峰の手元を見ると、そこには真っ黒のラベルのブラックコーヒーの缶が握られていた。


「あれ?峰、今日はカフェラテじゃないんだね」


確か前に、ブラックコーヒー苦手とか言ってなかったっけ……。


「いや……これもその、気分で」


そう言う峰の顔は、なんだか引きつっている。


「もしかして、自販機のボタン押し間違えた?」

「…………」

「図星じゃん」

「うるせえ、たまたまだよ」


峰はどこか投げやりに言って、ブラックコーヒー缶の蓋を開けた。

けれど、あたしには分かる。峰が嘘をついているということが。


「耳、赤くなってるよ」


あたしが言った瞬間、峰は咄嗟に缶を持っていない方の左手で耳を触った。

そう。 峰は嘘をつくとき、何故が耳が赤くなる。


「……こんなの余裕だよ」


峰はそのままブラックコーヒーをグイッと一気に煽った。

ゴクン、という音と同時に峰の顔がみるみる青ざめていくのが分かる。


「えっ、大丈夫?」


あたしはそんな峰に若干引き気味になりながら、ミルクココアの缶の蓋を開けると、一瞬にして峰はわたしの手から缶を奪って、先ほどと同様にそれを一気に煽った。